■英数字
Live Forever




ヘッド・フォンを耳に当て、ポケットに隠した煙草に火を点けるんだ。

Definitely Maybe を開く度に、今から何かスゴイ事が始まるような、
胸がワクワクする気分に浸れるんだ。
目を閉じ、両手で膝を抱えて、oasis に身を委ねる時、僕は無敵なんだ。

暴力も、非難も、憂鬱も、無力も、
世界中で行われてるかもしれない戦争も、
自民党も、明日の試験も、今日の天気の悪さも、
新聞のテレビ欄を眺めても面白そうな番組が無い事も、
あんまり気にならないんだ。

Live Forever が聴こえる時、
僕は地球の何処かに居るだろう、知らない人の事を考える。
理由はよく解らないけれど、そんな気分になる。

泣きそうな気分になるのは、
きっと彼等と出逢わぬまま、死んでしまうからだろうか。

世界中で生きて居る全ての人達に会う事は、不可能だ。
話す事も、触れる事も、擦れ違う事も、ましてや嫌う事も無い。
誰かを愛する事が、どれだけ尊い事かだなんて、今も僕には解らない。
誰かを嫌う事さえも、ろくに出来やしないのに。

大統領がミサイルが打ち落とさす場所には、
きっと、彼が愛する人も、彼が嫌う人も、居ないんだ。
それはナイロン製の布に水を溢すような、別にどちらでも良い事だ。

僕は今、無敵な気分に浸って、大統領のミサイルを握り潰す。

泣きそうな気分になるのは、

きっと彼等と出逢わぬまま、死んでしまうからだろうか。

会いたい人にも会えぬまま、死んでしまうからだろうか。

会えない人にも会いたいと、望んでしまうからだろうか。

大切な人は、もう何処にも見当たらない気がしてるからだろうか。

僕の中の無敵な気分は簡単に萎んで、
ポケットに隠した煙草を吸い終える頃には、
現実は、まだ何ひとつ変わってなんか居ないんだ。

暴力も、非難も、憂鬱も、無力も、
世界中で行われてるかもしれない戦争も、
自民党も、明日の試験も、今日の天気の悪さも、
新聞のテレビ欄を眺めても面白そうな番組が無い事も、
やっぱり全てが僕を悩ませるような気がするよ。

それでも、何度でも、oasis は回転するだろう。

素敵な歌に、一人で泣いた。
だから僕も、そんな物語を書こう。

僕の物語を読んだら、
今から何かスゴイ事が始まるような、
胸がワクワクする気分に浸れるような、そんな物語を書こう。

死ぬまで会えもしない誰かが、地球の何処かで、
泣いたり、笑ったり、怒ったり、時には安らいだりするような、
金にもならない、馬鹿げた物語を書こう。

Live Forever が聴こえる時、
僕は地球の何処かに居るだろう、知らない人の事を考える。
理由はよく解らないけれど、そんな気分になる。

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