■英数字
Donut -Happy Vanilla Strawberry Shakes-




彼の部屋に行くとまだ寝てた。

うつ伏せになって、枕の下に手を入れて
気持ち良さそうにまだ寝てた。
私はベッドに腰掛けると見せかけ
彼の背中に思い切り乗ってやった。


「何してんの?」


「ん……んぁ?」


んぁ、じゃない。


「おはよう。早いお目覚めね。今、何時?」


「……んぁ」


ちくしょう、まだ眠りの世界に行ってやがる。
大体そもそも何だ、その枕の下に入れた手は。
安心するのか、手、入ってると。


「コラ、もう起きなよ」


彼の背中に乗りながら、軽く頭を叩いてやった。


「・・・ぁう」


ぁう、じゃない。


「あのねぇ。
 課題やりたいから10時にミスドって言ったの君でしょ。
 なのにどうして昼の12時に私はココに来てるんですかね。
 とにかくもう起きなよ」


私は彼の尻を軽く叩くと立ち上がり、テレビをつけた。
お昼休みは穏やかにウキウキウォッチングするべきなのだ。
よく晴れた肌寒いこういう日には、そういう気分でいたい。



「ああ……今日のゲスト誰かなぁ」



本当はゲストが誰でも別に興味は無い。
私は元々あまり芸能人とか有名人とか
そういう人達には魅力を感じないのだ。

それよりも、そういう人達が作った物とか
例えば、歌だったり、絵だったり
もっと言えば
映画だったり、空間だったり
空気だったり、感動だったり
そういう物の方が、私はよほど興味があった。


で、今日のゲストは城みちるだった。



「うわ微妙」



別に城みちるの存在自体が微妙な訳では無いけれど
彼から創造性をあまり感じないのだから仕方が無い。
どちらかというと消耗性を感じるというか。


そんな事はどうでも良い。


私は右手に持った紙袋の中から
さっきミスドで買ってきたオールドファッションを
取り出して、食べた。

もぐもぐ。うん、美味い。

お昼休みは穏やかにウキウキウォッチングするべきなのだ。
ウォッチングしながら甘いドーナツを食べるべきなのだ。
よく晴れた肌寒いこういう日には、そういう気分でいたい。



「……美味そうな匂いすんね……わかった、ミスド」



ようやく目を覚ました彼が、枕に顔を埋めたまま言った。
まだ枕の下で手をもぞもぞしている。
新しい生物の誕生のようだ。



「ぴんぽん。よくわかったね」



「ああ……俺、ミスド、好き。
 それ、何……わかった、オールドファッション」



「ぴんぽん。よくわかったね」



「うん、それを僕の昼飯として、くれる訳ですね」



「ぶー。それはありえない」






最近はあまり雪も降らず、あまり冬らしくない。
冬が好きな私としてはメインイベントの雪が好きな訳だけど
まぁ、寒いのは嫌いなので、それはそれで別に悪くはないのだ。
冬の空気があれば別に良いのだ。

そうしてそんな日には彼の寒い部屋に行って
ウキウキウォッチングしながらドーナツを食べて
いわゆる取り留めの無い会話などを交しながら
じっと部屋が暖まるのを待つのだ。


「今日、誰、ゲスト」


「城みちる」


「ふぅん」


「で、今、電話してる明日のゲストが、ガクト」


「え!ありえなくない?」


「さぁ。知らないよ」


「業界の裏事情を感じますね」


「で、何時までベッドの中でそうしてんの?」


「んぁ?」


「んぁ、じゃなくて。課題は」


「ぁぁ……」


「………」


「……ぁ」


「………」


「…………ああっ!」


「わっ!えっ、何!?」


「課題の道具、学校に忘れてきた!」


「あらま」


「ああ、俺、アホ。課題、明日まで。どうしよう」


「よし、とりあえずオールドファッション食うか」


「うん」



私はオールドファッションを二つに割り
彼と分けて食べた。
思い切り小さい方を彼に分け与えた。
色んな意味で、罰だ。



そんな感じで
そうしてそんな日には彼の寒い部屋に行って
ウキウキウォッチングしながらドーナツを食べて
いわゆる取り留めの無い会話などを交しながら
じっと部屋が暖まるのを待つという
私の計画はしっかり遂行されたので
満足して私は彼のベッドに潜り込み
眠った。

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