■あ行
青の鎖(love is dead. but I'm alive.)




空気は常に変わり続けている。

理由を求める必要なんて無い。

僕等は何時も傷付いて来た。

僕等なりに傷付いて来た。


傷付いた理由を説明するのは

馬鹿がする事だ。

だから僕等は何時だって

口を塞いで来た。


新聞を眺めれば本日も

僕等の不幸なんかより

ずっと悲惨なニュースが流れているらしいけれど

新聞なんか読む気もしない。


だって僕等は不幸なんだ。

他の誰かが悲惨だろうと

僕だって不幸なんだ。


それを知って欲しくて叫びたいんだけど

そんなの叫んでる奴は気持ち悪いから

やっぱり僕等は口を塞いで

また何となく笑っている。


隣のクラスの竹下が

セックスフレンドの自慢話を始めたから

気に食わなくて僕は殴った。


まったく気に食わないのは

性を弄ぶ竹下に対する正義感でも倫理観でも無くて

お前如きにセックスできて何で僕にはセックスできないのかという

そりゃあ単なる嫉妬心。


本当に大好きな人は

何時も離れていってしまう。

手に触れるどころか

目を合わせる事さえ

今じゃ難しい。


竹下は僕を殴り返したけれど

何で殴られたのかさえ

竹下は理由に気付かない。


嗚呼

何て不幸な僕なんだろう。

何て不幸な君なんだろう。


職員室で三十分の説教を受けて

頭を下げて最初に考えたのは

トイレに行きたいって事だった。

生理現象は誰にも抑えようが無い。


僕は傷付いている。

だけど誰も理由なんて知らない。

漠然と只

傷付いているような気がしている。


多分

悲しんでいるフリをした方が楽なんだ。

そのうち理由も知らない誰かが手を差し出すだろう。

その手を振り払おう。


僕は傷付いている。

だけど誰も理由なんて知らない。

漠然と只

傷付いているような気がしている。


多分

苦しんでいるフリをした方が楽なんだ。

そのうち理由も知らない誰かが手を差し出すだろう。

その手を振り払おう。


「吸うか?」


竹下がトイレに入ってきて

僕を見るなりタバコを出した。

制服の内ポケットから取り出したのは

何だかよく解らない緑色のメンソール。


二人でタバコに火を点けて

トイレの臭い空気と一緒に吸い込んだ。

とにかく僕も竹下も不幸なんだ。

理由なんて解んねぇや。


空気は常に変わり続けている。

理由を求める必要なんて無い。

僕等は何時も傷付いて来た。

僕等なりに傷付いて来た。


「うげ、何だ、マジ不味い」


竹下は短く感想を告げると

舌を出しながら不満な顔をして

吸いかけのタバコを水に流した。


水に流せば綺麗なもんだが。

大事に吸えよ。

今はタスポが必要なんだぜ。

めんどくせぇ。


僕は何にも言う気がしないから

せめてタバコくらいは最後まで吸い込むさ。

吸い込んでから吐き出せば

少しくらいは僕の気持ちが誰かに届くかも。


んな訳あるか。


空気は常に変わり続けている。

愛は死んだ。

それでも僕は生きている。

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