■か行
果肉




やぁ 聴こえるかね 大した事は言わないが

どうしたって日々は過ぎ もはや色んな事を忘れてしまった

思い出そうとする事は出来るんだけど もう思い出す事は出来ないんだ

日々はどうだ 順調か あれから何が咲いた?


どうしたって伝えられる事は 伝えたい事の一部で

どうしたって伝わらなかった事は 伝えたかった事の全てなんだ

それでもどうして今日もこうして 誰かに何かを伝えようとするんだろうな

日々はどうだ 順調か あれから何が熟れた?


まだ伝えられるからだ それだけだ

それだけの為に まだ伝わると信じてるのだとは思わないか

忘れ果てる寸前の記憶を掘り起こして 何かを伝えるのかもしれないな

日々はどうだ 順調か あれから何が枯れた?


(嗚呼 果肉だ と僕は想うだろう)


僕だとか 君だとか 誰かが大切にしてた言葉が

町中にありふれたモンのように思える時は無いか?

自分達だけが大切にしてた宝物が 本当は何処にでもあるような

実は誰もが持ってる 何の価値も無いガラクタに思える時は無いか?


安っぽい小説だとか

安っぽい映画だとか

安っぽいラブソングの中に

僕等の言葉が詰まってる時に思うのは

誰もが持ち得ぬ唯一無二の物体なんて何処にも無いって事だ


それでも何で僕が是を 大切にしてるのか知ってるか?

それでも何で僕が今を 伝え続けようとするのか知ってるか?

それでも何で君が誰かの言葉を読んだり書いたり悩んだり忘れたり

真似したり真似しなかったり残ったり残らなかったり願ったり願わなかったり

酒を飲んだり煙を吸い込んだり手首を切ったり馬鹿げた薬に手を伸ばしたり

泣きながら朝まで携帯電話で話をしたり時を経て笑い話にしたりするのかを

知ってるのかを問うてみたいもんだ


日々はどうだ 順調か あれから何を撒いた?

人生を花に喩えるのは そろそろ辞めたらどうだ?


(嗚呼 果肉だ と僕は想うだろう)


咲かないかもしれないよ 花なんて

報われる事も 救われる事も そんなに都合よく訪れるかよ

それでも何で僕だとか君は 何かを伝える事を辞めようとはしないのかね


ああ そうだ 実る果実を 食べるのだ

目の前に実るありふれた果実を 美味そうに ほうばるのだ

ありふれた果実を 僕はお前らとは違うと 無邪気に叫んで ほうばるのだ


(もしも果実が実るなら そこに花は咲くのでは?)


僕は僕の果実をほうばり 僕だけの言葉を伝えよう

租借し 消化し 吸収し 嘔吐し 排泄する 僕の言葉を

間違っても一緒にするな 僕はお前らなんかとは違うんだぜ


(そしてまた それは君にとっても同じ事ではないのか?)


やぁ 聴こえるかね 大した事は言わないが

どうしたって日々は過ぎ もはや色んな事を忘れてしまった

思い出そうとする事は出来るんだけど もう思い出す事は出来ないんだ

日々はどうだ 順調か あれから何が咲いた?


どうしたって伝えられる事は 伝えたい事の一部で

どうしたって伝わらなかった事は 伝えたかった事の全てなんだ

それでもどうして今日もこうして 誰かに何かを伝えようとするんだろうな

日々はどうだ 順調か あれから何が熟れた?


まだ伝えられるからだ それだけだ

それだけの為に まだ伝わると信じてるのだとは思わないか

忘れ果てる寸前の記憶を掘り起こして 何かを伝えるのかもしれないな

日々はどうだ 順調か あれから何が枯れた?


君の果肉はどうだ?

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