■な行
野良犬デュード




お前の台詞からは人工的なスペルマの匂いが漂ってるぜ。誰もお前の演説に耳を傾けたりなんかしない。
虚偽的、退廃的、残影的な記憶に縋り付いているようなお前の演説などにはな。そこで俺はお前をどうすると思う?
別にどうもしないのさ。生かしておくだけさ。何よりも残酷で、何よりも皮肉な手段が欲しかったんだろう?
死ぬ事よりも辛い事は在るのか、なんてお前は何時でも知りたがっては居るが、本当のところは見ようともして居ないのだよ、おおよそ新聞記事の社会覧なんて目を通そうともしないんだろ。

素晴らしい文化は素晴らしい人民の手によって生み出されたと思うか?
いいや、素晴らしい文化は素晴らしい個人の手により生み出され、愚かな人民の手によって食い潰されて居る、と言った方が正しい。些細な戯言に耳を傾けてみろよ、世界は素晴らしく発達したが、全ての人民は等しく素晴らしいか?
発達した文明の真ん中で、お前の隣の女は「携帯の電波が届かない」なんて馬鹿げた事で、偉そうに腹を立ててる。

素晴らしい文化を生み出すのは、何時だってお前自身だよ。陳腐な言葉に置き換えてやろうか。
素晴らしい未来を生み出すのは、何時だってお前自身なんだ。認識が足りなさ過ぎやしないか。
どうせ誰かが何かを生み出してくれるって思ってるんだろ。お前は食い潰すだけさ。何とも愚かで賢しい事だ。
ところで今、何行目だ?
この時点で半分以上が脱落してるだろうよ。お前の演説なんて届きはしない。残念な事だな。
それでお前はどうする?

諦めるか。呆れるか。
お得意の短絡思考で「世の中は馬鹿ばかり」と言い逃れるか。
どちらにせよお前は何も変わらないし、お前の周囲に影響など生まれない。

誰かの生んだ影響に巻き込まれてみるか。
手招きしている奴等は何処にでも居るもんだぜ、深夜の繁華街を徘徊するように。
一つ訊ねてみたい事があるのだが、お前は何を持って居ると思う?
他の誰ひとりとして持っていない、お前だけが持って居るはずの何かだよ。

残念ながら、そんなモンは在り得ない。
お前だけしか持ち得ない、お前だけが持って居る事を許された何か、なんて、世の中の何処にも在り得ない。
それを、さも在るように訴えて、民衆の涙を誘うのだとしたら、お前には何の価値も無いという事だけ、とくと覚えておく事だ。おおよそほとんど全ての何かは、他の人間も持ち得る何かだ。お前だけに許された訳ではない。
たまたま、今、お前の手元に在るだけなのだ。それは幸運な事なんだ。

今、それを大切にせずに、何時になれば大切にする心構えなのか。
気を抜いて居たら簡単に奪われるぞ。
一秒後には失うかもしれない。
おおよそほとんど全てのモノは、それほどまでに脆い。儚い。
脆くて儚いからこそ、人はそれを失わぬように、より強固に、より頑丈に、繋ぎとめる手段を模索してきたはずだ。
例えば携帯電話ひとつにしたってな。

「携帯の電波が届かない」

馬鹿な女の戯言になど、耳を貸すな。
より強固に、より頑丈にと願って繋いだ縁ならば、馬鹿な女と同列の視点で語ってはいけない。
刹那的な快楽で短絡的に忘却を促してもいけない。

何故ならお前は、未だ何も持たぬお前だからだよ。
空虚なお前だからだよ。
お前が何者でもないならば、お前はお前自身に対してのみ、責任があるとは思わないか。
お前以外の誰かに、お前を委ねるのは、愚かな行為だとは思わないか。
思わないのだとしたら、お前はそのまま、そのように幸せに暮らせば良い。
それもまた、その種の人生において素晴らしい。

嗚呼、食い潰されるお前よ。
お前に食い潰される覚悟はあるか。

半身だけを泉に付けて、綺麗事をほざくならば馬鹿げてるぜ。
お前が何者でも無いならば、お前は失う事も無く、等しく得る事も無い。
世界に影響を与えるならば、お前は摂取され、やがて淘汰される。
お前は食われる覚悟も無いのに、闇雲に吼えて居るだけの野良犬だよ。
電波の届かない場所で腹を立てる馬鹿な女と同じか、腹も立てぬならそれ以下だ。

希望の中には希望を。
絶望の中には、尚、希望を見ろ。

お前が素晴らしいと信じるモノを信じ続ける以外に、お前の価値は無い。お前の意味もない。
誰かが生み出した何かを食い潰し、偉そうに文句を垂れる事で満足するならば、そうすれば良い。
携帯電話から流行の音楽から仕事から友人から恋人まで、垂れる文句を探すには何も苦労しないだろう。
何の文句から垂れる気だ、さぁ?

素晴らしい文化を生み出すのは、何時だってお前自身だよ。陳腐な言葉に置き換えてやろうか。
素晴らしい未来を生み出すのは、何時だってお前自身なんだ。認識が足りなさ過ぎやしないか。
どうせ誰かが何かを生み出してくれるって思ってるんだろ。
お前は食い潰される側に回れ。
食い潰されて骨も無くなるまで摂取され、誰かの記憶に留まるんだよ。本望だろう。何とも愚かで賢しい事だ。
ところで今、何行目だ?
この時点でほとんど全ての人間は脱落してるだろうよ。相も変わらずお前の演説なんて届きはしない。残念な事だな。
今一度、訊ねてみるが、それでお前はどうする?

それでも何人かは、きっと残っているはずだ、とお前は思うだろう。

希望の中には希望を見て、絶望の中には、尚、希望を見なければ、お前の言葉なんて単なる虚しい嘘なのさ。
だからお前は何時だって、こう考えなければいけない。
「それでもきっと、この言葉は届くのだ」。
お前は打ち出される文字の向こうの、向こうの、向こうから、そこに向かって話しかけなければいけない。
最終的に、人を信じなければいけないよ。人を信じればこそ、食い潰される事も本望だと思えるのではないか?

愛すればこそ、その身を捧げるのでは無いか。

お前の言葉からは人工的なスペルマの匂いが漂ってるぜ。出す為だけに出された言葉に、愛が含まれるはずもない。
愛は何かと問いたいならば、食われる覚悟を持つ事だな、我が身を。お前の死骸を啄ばむ者を愛せよ。
圧倒的だろ、絶望の量など。
それを嘆く事は愚かだが、そこから見付けた砂粒ほどの希望を吼える事は、何より尊いのさ、野良犬よ。

なぁ、聴こえるか、野良犬デュードよ。

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