何時だったかワタシは


左腕に5つの言葉を刻んだ。


其れは


刻んでから捨てるべき5つの言葉だった。


ゆっくりと深くナイフで5つの言葉を刻んだ。


流れる血は機械の油のように無機質に感じた。


5つの言葉を深く深くワタシの左腕に刻んで。


最後にワタシは、ワタシの左腕を切り落とした。





嗚呼、コレでもう何も感じなくていい、と。

















last song
















もう何も感じなくていいと思った。

だけどワタシは

今もきっと沢山の事を感じてる。




誰かの歌が聴こえた。

誰かの肌に触れた。

花が咲いた。

花が枯れた。




ずっと孤独感や虚無感と仲良くしてきた。

あの戦争で沢山のモノを見たワタシには

何時でも跡形も無く消える覚悟もあった。




誰かの歌が聴こえた。

誰かの肌に触れた。

花が咲いた。

花が枯れた。




見てみたい風景がある。

ソレを思い浮べてみる。

見てみたい風景がある。

延々と遠くまで広がる

甘く紅い果実のような

ドキドキするような風景がある。






何時だったか、左腕を切り落とした。

捨てるべき5つの言葉を刻んでから。




個々は各々に蠢き

身勝手に感情を吐露し

理不尽に、傷付け、傷付き

生死する。

もう何も見たくなかった。








だから、5つの言葉を、刻んだ。








「Ravage」

破壊と略奪。







「Envy」

嫉妬と羨望。








「Neglect」

怠慢と放置。








「Kill」

殺す、枯らす。








「Alive」

生きる。










ソレラの言葉の頭文字を


ワタシは左腕に刻んでいった。


ゆっくりと。


ゆっくりと。


































血が流れた。



醜さや悲しさが



左腕から紅く流れた。



左腕が泣いた。



ワタシも泣いた。







嗚呼、コレでもう何も感じなくていい。





個々が、各々が、人々が。


あの戦争でワタシに見せつけた


刻んで捨てるべき、5つの言葉。


R E N K A。










ワタシは、左腕を、切り落とした。
















ソレでもワタシは


日々を生きている。


色々な事を感じながら。


優しい風景を


風を


空を


海を


眺めたりしている。








そうして生きている。








花に水を与える。


綺麗な花が見てみたい。


何時か見た水の中の花。


例えばだけれど


あの花が欲しいと思う。




RENKAを刻んで捨てたワタシは


ソレでも左腕を無くしてなんかはいない。


笑って生きてる。


そして泣いてる。




窓を開け花に水を与える。


もう歌は聴こえなかった。




窓を開け花に水を与える。


もう歌が聴こえなくなって


どれ位の季節が過ぎたかしら。




あの雪しか降らない町を離れ


どれ位の季節が過ぎたかしら。








窓の外を眺める。














遠くに誰かが立っていた。















男の人だった。



右腕の無い男の人だった。



アレは誰かしら。



ワタシは何も言わず



右腕の無い男の人を眺めた。



アレは誰かしら。



























































笑った。



























































自由に舞い、お生きなさい。


























































そして触れ合えたなら素敵な事だ。


























































絶え間なく続くレンカ。



























































嗚呼、絶え間なく、続く、レンカ。









END


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