■さ行
灼熱のコロナ




君に話そうと思ってた事が色々と溜まってたんだけど、忘れちゃった。
他愛の無い話もあれば、割と真面目な話もあった気がするんだけど、残さず全部忘れちゃったから、
別に無理して話す程の事じゃなかったんだろう。

夏がスライド方式の映画みたいに近付いてる。
時速300キロの飛行機が飛び立って、些細な雨粒だけが落ちてくる。
それでも本日は晴れで、明日も晴れだろう。

理由だけが欲しかったし、理由だけが要らなかったんだ。
理由に縛られるのは御免なくせに、理由なく持て余してるのは納得いかなかったからね。
明日が晴れなら洗濯でもするよ。だけど本日は面倒くさいな。

窓から外を眺めてる。別に何も無いけどね。
応募しようと思ってた賞の〆切が本日までだったので、さっき慌てて書き上げたんだ。
一時間で書き上げた作品が賞に引っかかるとは思えないな。
それでも今の僕にとっては、自分から動いてる事実が大切なんだろうし、
自分で築き上げた大層立派な殻を自分で突き破ろうとしてる事が大切なんじゃないかと思うよ。

賞の発表は秋頃になるみたいなので、何かあったら伝えるよ。
何もなかったら伝えない。季節が変わるのと同じようなモンだよ。
ヘッド・フォンから流れる洋楽のAメロがBメロに変わるのと同じだな。

楽しい事を書こうとした時は、楽しい事なんて書けないよ。
悲しい事を書こうとした時に、楽しい事は生まれるんだと思う。
悲しさや、苦しさや、虚しさは滑稽だからだ。
くだらない事で真剣に悩む姿が滑稽だからだ。

誰もが過ぎ去りし日の悲しみや苦しみを思い出して「あの頃は若かった」なんて言って笑ってるのは、
そういう事なんじゃないかな。

だから悲しい人よ、君よ、どうか笑ってくれないか。
真夜中に書いたラブレターを、翌朝には赤面しながら破り捨てたくなるのは何故だろうね。
だけどそんな事を、もう何年も僕は続けてる。

真剣に悲しむ事は滑稽だよ。真剣に苦しむ事も滑稽だ。真剣に悩む姿が滑稽だから、本日も僕等は笑っていられる。
真剣に悩む姿が滑稽だから、本日も僕等は笑っていられる。
よく覚えておいてくれ。そして間違えるな。

君が悲しむのは、明日には笑う為なんだろう?
君が苦しむのは、明日には笑う為なんだろう?

君の滑稽な姿を見て笑う人がいるならば、笑わせておけばいい。
笑う為に笑える瞬間なんてのは、僕等の人生において、そう多くは無い。
もしもそんな瞬間に出逢えたなら、存分に笑うべきだ。

多くの人達が、何かを共有する為に、何かを払拭する為に、何かを忘却する為に、
笑わなければならない人のように笑ってる。
君は笑う為に笑えるといいな。

世の中は矛盾してるよ、何回も言うように。
自分の好きな事ばかりやって生きてきたような僕なんでね、
自分の好きなようにやっていけるなら、今のままで良い気はするよ。

色々な事に腹は立つよ。
割と常にイライラしてる人間だと思う。
厄介なのはイライラしてる時の方が良いモンが書ける事だな。

世の中は平等だって言う奴が嫌いだ。
物事に優劣を付ける事を非難する人間が嫌いだ。
男女平等だと訴える奴が嫌いだ。
人種差別や職業差別を非難するような奴が嫌いだ。
徒競走で順位を付けるのを止めましょうと言うような奴が嫌いだ。
そんな奴に限って上から物を眺めてやがる。

同じな訳が無い。全員が見事に違う。
誰も優れても劣ってもいないなら、それは僕じゃなくても良い事なんだ。
君じゃなくても良い事なんだ。

僕を罵ってくれないか。
醜いと言ってくれないか。汚いと言ってくれないか。
どうしようもない僕を、僕と認めてくれないか。誰かと同じにしないでくれ。

僕は君が良いし、君じゃなければ駄目なんだ。どうすればいい?
誰かの代わりを誰かで埋め合わせられるならば、
喫茶店でアイス・ミルク・ティーを飲もうが、アイス・レモン・ティーを飲もうが、同じだって事だよな。
平等主義者達は自己を確立した立場から、自己主張を繰り返すだけだろう。

もしも本当に全てが平等ならば、僕の代わりにアイス・ミルク・ティーを飲んで、僕を満腹にさせて欲しい。
無理だと思うよ。僕が飲みたいのはアイス・レモン・ティーだし、今の僕には飲む事が出来ないんだもの。

相対した僕と君が同じ方向を見て、僕はそれを「右だ」と言う。
でもきっと君は「左だ」と言うだろう。どちらも真実だ。どちらも嘘じゃない。

僕から見ればそれは右で、君から見ればそれは左だ。
ところが僕等は後生大事に、その差異を引きずって生きるだろう。
何が間違っていたのかを悩み続けて生きるだろう。
答を知った気にもなるだろう。
実に滑稽に。

平等ではないだろう?
僕と違う君よ、僕等は別の人間だろう?
嗚呼、どうして僕は君を傷付けてしまったのかな。
そんなはずじゃなかったのに。同じ景色を見てたつもりだったのに。

夏がスライド方式の映画みたいに近付いてる。
時速300キロの飛行機が飛び立って、些細な雨粒だけが落ちてくる。
それでも本日は晴れで、明日も晴れだろう。

理由だけが欲しかったし、理由だけが要らなかったんだ。
理由に縛られるのは御免なくせに、理由なく持て余してるのは納得いかなかったからね。
明日が晴れなら洗濯でもするよ。だけど本日は面倒くさいな。

窓から外を眺めてる。別に何も無いけどね。
応募しようと思ってた賞の〆切が本日までだったので、さっき慌てて書き上げたんだ。
一時間で書き上げた作品が賞に引っかかるとは思えないな。
それでも今の僕にとっては、自分から動いてる事実が大切なんだろうし、
自分で築き上げた大層立派な殻を自分で突き破ろうとしてる事が大切なんじゃないかと思うよ。

窓から外を眺めてる。別に何も無いけどね。
一人で眺めてる時、きっとそれは絶対的な右で、または絶対的な左だろう。
僕は真ん中で、それを眺めてるだけなんだから。自分だけを基準に物事を眺めてるだけって意味だよ。
きっと君なら、僕とは別の事を考えるんだろう。

君ならば何を考えるだろう? なんて馬鹿な事を考えてみた。
それはきっと愚かなほどに滑稽な思考で、思わず一人で笑ってしまった。
真剣に悲しむ事は滑稽だよ。真剣に苦しむ事も滑稽だ。真剣に悩む姿が滑稽だから、本日も僕等は笑っていられる。よく覚えておいてくれ。そして間違えるな。

君が悲しむのは、明日には笑う為なんだろう?
君が苦しむのは、明日には笑う為なんだろう?

だから悲しい人よ、君よ、どうか笑ってくれないか。
ああ、明日だって、明後日だっていいよ。一年後でも、十年後でもいいよ。
君が笑うまで、僕は実に滑稽に、悩んでは苦しむだろう。

夏がスライド方式の映画みたいに近付いてる。
時速300キロの飛行機が飛び立って、些細な雨粒だけが落ちてくる。
それでも本日は晴れで、明日も晴れだろう。

雲間から差し込む太陽に、対流圏・成層圏・中間圏・熱圏へ突っ込んで、大気圏を突破して、
灼熱のコロナにタッチして、一回転して戻ってくる。

僕は宇宙で一番、君の事を考える男だよ。

明日が晴れなら、洗濯でもしよう。

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